オーダー: order(英)

 

オーダーとは、古代ギリシア、古代ローマ、古典主義建築などで、通常、柱下部の直径を基準とした比例関係によって、柱および上部架構の寸法を決定するシステムのことです。古代ギリシアにおいては、ドリス式イオニア式コリント式の3種があり、ローマ時代に至って、コンポジット式トスカナ式が付加されました。(→オーダーのもつイメージ

古典主義建築において、柱基(通常はこれをもつ)、柱身、柱頭とエンタブレチュアを持った円柱のことで、認容されている五つの形式---ドリス式、トスカナ式、イオニア式、コリント式、コンポジット式---の内の一つの形式に従って装飾と比例が決定される。そのうちで、もっとも単純な形式はトスカナ式であり、これは古代エトルリアの神殿にその起源を持つといわれているが、おそらくドリス式の方がその起源は古く、のちにギリシア・ドリス式とローマ・ドリス式に分岐したものと推定される。このうち、前者はパルテノンやパエストゥムの神殿に見られるように柱基が存在しない。イオニア式オーダーはBC6世紀中期の小アジアにその起源を持つイオニア式の柱頭はセム族にその起源を持つ早期アイオリス柱頭から発展したと考えられる (アイオリス柱頭はパルメットによってその間を満たされた二つの渦巻が支える長円の頭部を有している)。コリント式オーダーは、BC5世紀のアテネ人の発明によるものだが、のちにローマ人の手により発達し、ルネサンスの形態の原型にまで至った。ドリス式、トスカナ式、イオニア式、そしてコリント式オーダーは、ウィトルウィウスによってその記述がなされ、1540年にはセルリオがオーダーに関する書を刊行した。その書は、比例と装飾の詳細をルネサンスと構成の建築家に対し制定したといえる。
N.ペヴスナー『世界建築辞典』(鈴木博之監訳、鹿島出版会)より

[参考文献]

J.Summerson、The Classical Language of Architecture、ロンドン、1964 (「古典主義建築の系譜」、鈴木博之訳、中央公論美術出版)

ドリス式->

ドリス式オーダーのプロポーションウィトルウィウスによるドリス式オーダーのプロポーション


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イオニア式->

イオニア式オーダーのプロポーションウィトルウィウスによるイオニア式オーダーのプロポーション


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コリント式->

コリント式のプロポーションは、イオニア式と同じ。柱頭をコリント式に入れ換えれたものです。

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コンポジット式

コンポジット式は、ローマ独自のオーダーで、そのプロポーションは、イオニア式と同じ。柱頭をコンポジット式に入れ換えれたものです。また、コンポジット式の柱頭は、イオニア式柱頭とコリントス式柱頭が合成された形である。
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トスカナ式

トスカナ式は、古代ローマのトスカナ地方独自のオーダー。プロポーションはドリス式と同じですが、柱身にフルーティングがないのが特徴です。

上記図版出典:ウィトルーウィウス著(森田慶一訳)、『ウィトルーウィウス建築書』、東海大学出版会

 

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概説

オーダーとは、術語としては、ギリシア・ローマの建築や古典主義建築における柱とその上部架構の形態を、定形のパーツと、比例関係を用いて決定する法則を意味します。たんなる形態の種類として考えた場合、現代において仮に利用価値があるとしても、それはおそらく商業的な色合いの強いもの、あるいは一個人の嗜好の反映など、形態自体のもの珍しさに重きが置かれるのであって、オーダーの精神を反映するものではありません。

オーダーをギリシア・ローマの建築や古典主義建築にかぎらず、建築デザイン行為一般に広げて考えて見るとどうでしょうか。そのためには、柱と梁から成る単純な構造形式が、なぜ《オーダー》として認識されたかを考えればいいでしょう。

建築には二つの側面があります。芸術としての《美を求める真摯な態度》と、工学としての《合理精神》です。このどちらが欠如しても、制作物は建築とはなりません。

オーダーとはそのような精神、つまり、美を合理的に生みだそうとする精神の産物と位置づけられます。

美を定性的に捉えても、形を生みだす手段にはなりません。美が定量化できるかどうかはまだ分かりませんが、建築が工学を含んでいる以上、美を定量化し、形を生みだす手段として身につけようとする姿勢が重要となると考えられます。

そんな視点からオーダーを考えれば、現代におけるオーダーの意義が見えてくるでしょう。現代では、通常ミリメートルという絶対的な単位で作図する場合が多いですね。建築空間もそのような絶対的な単位で発想するとどうなるでしょうか? 確かに、オーダーが柱最下部の寸法を基準にしてその倍数や約数で構成されたように、すべての寸法は1mmの倍数で示されます(通常1mm以下の数値は使わないので、ここでは「倍数」と言っています)。1はすべての数の約数だから当たり前のことです。しかし、そうやってできた建築はオーダーの精神を持っていると言えるでしょうか......そんなことはありえませんね。そして、次のようなことをヒントにオーダーの現代における意義を考えてみてください。

  • モデュロールとモデュールプランニング
  • 尺貫法、ヤードポンド法....とメートル法
  • 木造在来工法の寸法体系と木割
  • etc.

 

 

 

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